ピル

ピルは何歳まで飲み続けていいの?服用する注意点と代替案を解説

ピルは何歳まで飲み続けていいのか

「ピルは何歳まで飲み続けてもいいのか」に関して、安全性やリスクを考えると40歳までとされています。

ピルとは2種の女性ホルモンが配合された錠剤で、医師の診断を受ければ基本的に初経から閉経まで服用可能です。

ピルはホルモン含有量により、大きく分けて低用量ピルと中用量ピルの2種類あります。

中用量ピルの方がホルモン含有量は多く、生理日の調整やアフターピルとして服用します。

低用量ピルは避妊だけではなく生理痛や月経困難症の改善の目的でも服用され、ホルモン含有量が少なく副作用も少ないのが特徴です。

とはいえ「ピルは40歳過ぎて飲んでも大丈夫?」「ピルの代わりになる薬はあるの?」という悩みの声も寄せられます。

ピルは何歳でも服用できる薬ではなく、健康状態や生活習慣によっても判断が異なるため、専門医と相談して決めなければいけません。

本記事では、ピルは何歳まで飲み続けていいのか、年齢別による服用方法を解説します。

服用する際の注意点やピルが飲めないときの代替案も紹介するので、ピルの服用で悩んでいる人は参考にしましょう。

ピルは何歳まで飲んでOK?年齢別による服用方法

ピルは何歳まで飲めるのか、年齢別による服用方法は以下の通りです。

  • 10代はホルモンバランスを安定させるため
  • 20代~30代は避妊や生理調整の目的が多い
  • 40代は閉経に近づくとリスクがあり相談が必要
  • 50代以降は血栓症のリスクが高く服用できない

ピルは女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンの2種が配合された薬で、原則月経のある女性なら40代まで服用可能です。

ピルは1錠あたりのエストロゲン含有量により、大きく分けて以下の2つに分類されます。

ピルの種類 服用目的 服用方法
低用量ピル ・避妊
・月経前症候群(PMS)の改善
・月経困難症や月経不順の改善
・肌トラブルの改善など
1日1錠同じ時間に服用
中用量ピル ・生理日の移動
・月経困難症や月経不順の改善
・緊急避妊目的(アフターピル)など
医師の処方に基づいて服用

低用量ピルは中用量ピルに比べてホルモン含有量が少なく、副作用のリスクも軽減されるため、多くの患者に処方される傾向です。

10代はまだ体が成長期で女性ホルモンバランスも不安定なので、ホルモンバランスを安定させるために低用量ピルを服用します。

20代~30代は低用量ピルを正しく服用すれば、避妊だけでなく生理周期を調節する効果も期待可能です。

40代は閉経に近づくとホルモンバランスが変化し、低用量ピルを服用する際は心血管系のリスクが上昇するため注意する必要があります。

50代以降は年齢とともに血栓症のリスクが高くなるので、一般的にピルは処方されません。

ピルの服用方法は年齢別によるものの、個人の体調や生活習慣によって判断が異なるので、婦人科医と相談して服用しましょう。

10代はホルモンバランスの安定に効果

初経を迎えたばかりの10代は月経周期が不安定なため、ホルモンバランスを安定させる目的で低用量ピルを服用します。

10代はまだ卵巣機能が未成熟で、生理不順や生理痛の悩みを抱える人が多いです。

低用量ピルは避妊目的だけでなく、生理のサイクルを安定させ、生理中に強い痛みが生じる月経困難症の治療としても改善が期待できます。

学校や仕事を休むほどの痛みで日常生活に支障をきたす状態なら、婦人科医に相談してみましょう。

低用量ピルを服用すると生理の悩みが改善され生活の質も向上させられるため、医師と相談の上で自分に合ったピル選びが大切です。

まだ体が成長過程にあるので、副作用を理解し、必ず定期的な健康チェックを受けて婦人科医に処方してもらいましょう。

20代~30代は避妊や生理周期を調節

20代~30代は避妊目的で低用量ピルを使用する女性が多く、生理周期を調節するためにも服用します。

仕事や家事など生活スタイルに合わせて、生理のスケジュールをコントロールでき予測しやすいのが魅力です。

ピルは2種の女性ホルモンの作用で卵巣を休ませて排卵を抑制するため、正しく服用すれば99%以上の避妊効果が得られます。

子宮内膜を薄くして精子が子宮に入りにくくするので、コンドームや緊急避妊薬よりも避妊効果が高いです。

ただし避妊目的で服用する際は、毎日決まった時間に服用しなければ効果が得られません。

低用量ピルを服用するときに注意する点は以下の通りです。

  • 飲み忘れをしない
  • 服用初期に副作用の可能性がある

飲み慣れるまでは、副作用として不正出血や吐き気が生じるケースも。

低用量ピルを服用するなら健康状態を把握するだけでなく、将来の妊娠希望を考慮して必ず産婦人科医に相談して服用しましょう。

喫煙習慣がある人は血栓症のリスクが高くなる傾向があるため、ピルの服用に制限が出やすくなります。

安全にピルを服用するために、生活習慣の見直しと定期的な検査を受けましょう。

40代は閉経に近づくため注意が必要

40代になり閉経が近づくとホルモンバランスが変化し始めるため、低用量ピルの服用には注意が必要です。

40代になるとピルを服用していなくても、加齢による心血管系のリスクが上昇します。

さらに低用量ピルを服用すると、以下の疾患のリスクが高まる可能性も。

  • 血栓症
  • 心筋梗塞
  • 脳卒中など

非喫煙者で心血管系疾患のリスクがない40代の女性は、閉経まで低用量ピルの服用が可能です。

低用量ピルの服用を一度やめて40歳以降に再開すると、卵巣の働きの低下や血栓症のリスクがより高くなるため慎重に服用する必要もあります。

避妊目的なら他の避妊具で、更年期障害の緩和目的ならホルモン補充療法(HRT)が検討されるので、婦人科医に相談しましょう。

50代以降は血栓症のリスクが高く処方されない

50代以降は一般的に閉経を迎える時期で、血栓症のリスクが高くなるためピルは処方されません。

日本の産科婦人科学会のガイドラインでは、原則として閉経していない49歳までの女性なら服用可能です。

50歳になると閉経していなくても、加齢による心血管疾患のリスクが増加します。

低用量ピルの服用で更年期症状が軽減される可能性はあるものの、更年期にピルを服用していると閉経したのかどうかの判断も難しいです。

更年期に伴う不調や月経困難症の症状がある人は、低用量ピルに代わってホルモン補充療法が推奨されます。

個人の健康状態に応じた治療の選択が重要なので、低用量ピルの継続や中止を判断する際は必ず婦人科医と相談しましょう。

ピルを避妊目的以外に服用する効果

ピルを避妊目的以外に服用する効果は以下の通りです。

  • 生理痛や生理不順を改善
  • 月経前症候群(PMS)を軽減
  • ニキビや肌荒れなど肌の悩みを改善
  • 卵巣がんや子宮体がんの発症リスクを軽減

低用量ピルを服用すると排卵を制御する働きで、生理痛や生理不順が改善されて生活の質を高められます。

低用量ピルがホルモンバランスの変動を抑え、月経前症候群(PMS)のイライラや気分の落ち込みなどを軽減する可能性があります。

低用量ピルを飲むとホルモンバランスが整い、ニキビや肌荒れなど肌の悩みを改善する効果も。

低用量ピルの排卵を抑制すると卵巣や子宮内膜症への刺激が少なくなり、卵巣がんや子宮体がんの発症リスクの軽減も期待できます。

ピルのメリットを知って、必要に応じて専門医と相談の上で服用を始めましょう。

生理痛や生理不順の改善で生活の質を高める

低用量ピルには排卵を抑える働きがあるため、生理痛や生理不順の改善が見込め、生活の質を高められます。

排卵を抑制すると、子宮内膜が厚くなりすぎるのを抑えられるからです。

月経の痛みの原因であるプロスタグランジンの分泌が減少すれば、子宮の収縮運動が抑えられるため生理痛は軽減します。

「普段から生理痛が酷い」「生活に支障が出る」と悩んでいる人は、改善の可能性も。

通常受精が起こらなかったときには、厚くなった子宮内膜が剥がれ落ちて月経が起こります。

子宮内膜が剝がれるよう子宮内膜から分泌される、子宮を収縮させる働きを持つ物質がプロスタグランジンです。

ホルモンバランスが整うと月経周期が安定し、生理不順が改善につながります。

月経のタイミングが読めるようになると、旅行や大切な予定を避けやすいのもメリット。

生理痛や生理不順の悩みから解放され、生活の質を向上させる手助けとなり、精神的なストレスも軽くしたいときには、低用量ピルを検討しましょう。

月経前症候群(PMS)のイライラを軽減

低用量ピルを服用するとホルモンバランスの変動が抑えられ、月経前症候群(PMS)のイライラを軽減できます。

PMSは月経前に現れるこころとからだの不調で、女性ホルモンが急に変動するのが原因の1つです。

PMSは月経の3日~10日前に発症し、月経が始まると症状が落ち着き消失します。

月経前に現れるPMSの症状は以下の通りです。

  • イライラ
  • 気分の落ち込み
  • 不安
  • 不眠
  • のぼせ
  • 頭痛
  • 腹痛
  • むくみ
  • 乳房が張るなど

月経前に決まってイライラや頭痛の症状が出る人は、ピルの服用が向いている可能性も。

服用するとホルモンバランスの変動が抑えられ、PMSの症状軽減が期待できます。

PMSには明確な診断基準がないので、生活に支障をきたす症状なら婦人科医に相談して低用量ピルを処方してもらいましょう。

ニキビや肌荒れなど肌の悩みを改善

低用量ピルを飲むとホルモンバランスが整うため、ニキビや肌荒れなどの肌トラブルの改善にも効果があります。

低用量ピルには男性ホルモンの働きを抑え、皮脂の過剰分泌を抑える作用があるからです。

思春期や20代の女性は男性ホルモンが活発になり、毛穴のつまりや炎症が起こりやすくなります。

低用量ピルを服用してから効果を実感するまで、約2〜3か月程度かかるのが一般的です。

皮膚科やエステで治らなかった肌荒れやニキビが、ピルの服用によってホルモン変動が安定して改善される可能性も。

肌質や体質によって個人差があるため、低用量ピルを服用する際は必ず専門医の診察を受けてから決めましょう。

卵巣がんや子宮体がんの発症リスクを軽減

低用量ピルを飲み続けると、卵巣がんや子宮体がんの発症リスクを軽減させる効果があります。

排卵を抑制すると卵巣や子宮内膜症への刺激が少なくなり、細胞増殖が起きにくくなるからです。

ピルに含まれるプロゲステロンが、子宮体がんの原因であるエストロゲンの過剰な働きを抑制します。

低用量ピルは子宮内膜症の予防や改善など婦人科疾患はもちろん、大腸がんの発生リスク低下などの影響も。

大腸がんの発生リスクを下げる理由は分かっていませんが、研究の結果、可能性が確認されている状態です。

低用量ピルの服用期間が長いほど効果は高まり、服用後も効果が継続すると言われています。

避妊目的だけでなく、女性の健康を総合的にサポートする薬として低用量ピルを服用したい人は、専門医に相談しましょう。

ピルが服用できないときの代替策を紹介

年齢や体質などで低用量ピルが服用できないときの代替策は以下の通りです。

  • 避妊が目的の人は子宮内避妊器具を装着する
  • PMSの症状緩和が目的ならミニピルを服用する
  • 更年期ならホルモン補充療法(HRT)に替える

低用量ピルを服用せずに避妊したい人は、子宮内避妊器具を使用しましょう。

PMSや生理痛などの治療目的なら、エストロゲンを含まないミニピルを服用すれば、血栓症のリスクは少なくなります。

40歳を過ぎて更年期に近づいたら、ホルモン補充療法(HRT)へ移行する方法がおすすめです。

低用量ピルが服用できずに代替策を検討する際は、産婦人科を受診して専門医と相談して最適な方法を提案してもらいましょう。

避妊目的なら子宮内避妊器具を使用する

低用量ピルが服用できずに避妊を目的とするなら、子宮内避妊器具(IUD)を使用しましょう。

子宮内避妊器具を子宮内に挿入すれば、精子の運動能力を低下させて受精や着床の防止が可能です。

子宮内避妊器具のミレーナは黄体ホルモンが付加されており、子宮内膜を薄くする作用でピルよりも避妊成功率が高いとされています。

一度装着すれば約5年間効果が持続するため、ピルのような飲み忘れの心配や血栓症のリスクもありません。

出産経験がない人や子宮の形態異常がある人は使えない可能性もあるので、医療機関で診察を受けながら使用しましょう。

エストロゲンを含まないミニピルを服用する

エストロゲンを含まないプロゲステロンのみが成分のミニピルを服用すれば、血栓症のリスクは低くなります。

妊娠の目的ではなくPMSや生理痛などの症状を緩和したい人は、低用量ピルが服用できなくてもミニピルなら服用可能です。

ミニピルは低用量ピルと同じように、避妊効果も期待できます。

ミニピルは毎日同じ時間に服用しなければならず、3時間以上ずれると避妊効果が低下するため時間管理が必要です。

ミニピルには休薬期間がなく、365日間毎日服用しなければいけません。

服用し始めのうちは以下の副作用が出る可能性もあります。

  • 不正出血
  • 乳房の痛み
  • 頭痛
  • 吐き気など

不正出血は多くの人が経験するものの、時間の経過とともに落ち着いてきます。

低用量ピルを服用できない人はミニピルの服用を始める前に医師と相談し、適切な指導を受けましょう。

更年期に近づいたらホルモン補充療法(HRT)へ移行する

40歳になり更年期に近づくと、低用量ピルからホルモン補充療法(HRT)への移行が検討されます。

更年期になるとエストロゲンの分泌量が減少するため、薬で補充して更年期障害の症状を緩和させる目的で処方を実施。

更年期に現れる主な症状は以下の通りです。

  • ホットフラッシュ(ほてりやのぼせ)
  • 発汗
  • 動悸
  • 冷え
  • イライラ
  • 集中力の低下
  • 骨粗しょう症など

ホルモン補充療法をすると更年期障害の予防に効果があり、投与方法は以下の通りです。

  • 飲み薬
  • 貼り薬
  • 塗り薬など

ホルモン補充療法の投与方法は、自身の健康状態やライフスタイルに合わせて選択されます。

すべての更年期症状に効果があるわけではないため、症状に応じて検討しましょう。

ピルは何歳まで服用できるのか知っておきたいQ&A

低用量ピルは何歳まで服用できるのか、知っておきたいQ&Aは主に以下の3つです。

初めて低用量ピルを服用したときは、吐き気や頭痛などの副作用が出る人もいます。

服用し始めてから数日~1週間経てば、体が慣れて落ち着く人も多いです。

低用量ピルを服用すると、エストロゲンにより更年期障害が緩和される可能性はあるものの、専門的なホルモン補充療法の方が向いています。

1日15本以上タバコを吸う人は、35歳までしかピルを服用できません。

喫煙者や高血圧など持病がある人は血栓症のリスクが高いため、必ず医師の診断を受けて判断してもらいましょう。

ピルの副作用と対策方法は?

ピルを服用した際に起こる副作用は以下の通りです。

  • 吐き気
  • 頭痛
  • 眠気
  • むくみなど

服用開始から数日〜数週間で体が慣れて落ち着くものの、生活に支障が出てしまうと仕事や家事が進みません。

ピルによる副作用が出た際の対策方法は以下の通りです。

  • 服用時間を夜に変える
  • 食後に服用した後安静にする
  • 冷たいタオルで冷やす
  • 長時間テレビやパソコンを避けるなど

低用量ピルは1日1回服用するので、服用時間を就寝前にすれば昼間の吐き気は抑えられます。

服用を続けて体に慣れるのも必要ですが、症状が続くときは専門医に相談して吐き気止めを併用するか、ピルの種類変更を検討しましょう。

ピルの服用は更年期障害に効果はある?

低用量ピルにはエストロゲンが含まれているため、更年期障害が緩和される可能性はあります。

更年期は女性ホルモンのエストロゲンの分泌が急激に減少し、急なのぼせやめまいなどの不調が現れる時期です。

更年期障害の主な症状は以下の通りです。

症状の種類 詳細
血管運動神経症状 ほてりやのぼせ、異常な発汗など
精神神経症状 イライラ、不安、不眠など
その他の症状 腰痛、関節痛、皮膚のかゆみなど

更年期障害で日常生活に支障をきたす状態なら、治療には専門的なホルモン補充療法(HRT)が推奨されます。

更年期は閉経から前後10年間の45歳から55歳前後なので、低用量ピルの服用は血栓症のリスクが高くおすすめできません。

低用量ピルと更年期障害の治療薬ではホルモン量や目的が異なるため、症状がある人は婦人科医で相談しましょう。

喫煙者や高血圧など持病がある人でも服用できる?

喫煙者が低用量ピルを飲めるかどうかは以下の条件によって異なります。

  • 年齢
  • 喫煙本数
  • ピルの種類

一般的に35歳以上で1日15以上の喫煙者は、血栓症のリスクが高まるため低用量ピルは服用できません。

35歳未満の喫煙者やミニピルなら処方されるケースもあります。

低用量ピルと喫煙を併用すると、心筋梗塞や脳梗塞などのリスクも高まるため、禁煙を勧められます。

高血圧で最高血圧が160mmHg以上、または最低高血圧が100mmHg以上の人は、基本的に低用量ピルを処方されません。

高血圧で治療している人は、医師との相談で低用量ピルが処方される可能性があります。

低用量ピルを服用する際は必ず医師の診断と判断が必要なので、現在の健康状態や喫煙習慣などを正確に医師に伝えましょう。

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